甲府家庭裁判所 昭和31年(少イ)18号 判決
被告人 鈴木やすの
主文
被告人を罰金二万円に処する。
右罰金を完納することが出来ないときは金二百五十円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
訴訟費用は全部被告人の負担とする。
理由
被告人は甲府市穴切町三百六十六番地で特殊飮食店「寿々好」を経営してゐる者であるが昭和二十九年九月頃から昭和三十年十月頃までの間同所に於いて満十八歳に満たない児童であるA子(昭和十三年四月四日生)をして来客に対し、売淫をさせ、以つて児童に淫行をさせたものである。
右事実は
一、被告人の当公判廷に於ける供述。
一、証人鈴木喜則の当公判廷に於ける証言。
一、A子の戸籍抄本。
一、同人の検察官に対する供述調書(第一、二回)
一、同人作成に係る三沢検事宛の上申書。
一、鎌田末雄の司法警察員に対する供述調書。
一、倉田武の司法警察員及び検察官に対する各供述調書。
一、腰巻正子の司法警察員及び検察官に対する各供述調書。
一、早川町役場より甲府地方検察庁宛被告人の身上調査に関する照会書回答。
一、被告人の司法警察員及び検察官に対する各供述調書。
によつて、これを認める。
弁護人は被告人はA子が二十二歳であると自称し、又同人の体格容姿などの点からも二十才以上に見えたのでこれを信用して雇入れたものであり、その真実の年齢を知らないことについては過失なきものと主張するが、ここに年齢を知らないことについて過失なしとするには使用者が被用者である児童の戸籍謄本又は抄本等についてその生年月日を調べたとか或は児童の親権者について年齢を確かめて見たとかその他確実性のある調査方法を一応講じたことを要するものと解せねばならない。然るに右のように単に被用者本人の言を信用し或は被用者の体格容姿などの点よりこれを二十才以上に見たと云ふような事情から被告人に於いて被用者を十八才未満でないと信じたとしてもこれは結局年齢についての調査方法が不充分であつて過失なしとは云ひ得ないので弁護人の右主張はこれを採用するに足りない。
法律に照すに被告人の判示所為は児童福祉法第三十四条第一項第六号、第六十条第一項に該当するのでその所定刑中罰金刑を選択し、その所定額範囲内に於いて被告人を罰金二万円に処し罰金不完納の場合に於ける換刑処分について刑法第十八条を適用し、訴訟費用の負担につき刑事訴訟法第百八十一条第一項に則り主文の通り判決する。
(裁判官 小宮山照雄)